DCF法
Q DCF法について、具体的に教えてください
A 収益方式のなまでも、DCF法は代表的な株主価値評価方法です。DCF法は、将来獲得が期待されるキャッシュフローを資本還元率により現在価値に割り引くことで株式を評価する方法です。
1.事業計画の作成
事業計画は、綿密な計画のもとに行わなければなりません。その場合、次の点に注意して事業計画を作成しなくてはいけません。
- 売上計画と設備投資計画や人員計画との整合性があるか
- 設備投資計画と減価償却費との整合性があるか
- 事業の成長性に対して考えられるリスク要因を十分加味しているか。
- 設備投資の計画性に客観性があるか。
2.将来フリー・キャッシュフローの算出
DCF法では、一般的にFCF(フリー・キャッシュフロー)を用いて算出します。
FCFの作成は、事業計画をベースに作成しますが、いくつか調整項目があります。FCFは、事業外活動(剰余資金の運用や貸付等)や財務活動(増資や借入れ・返済・支払利息)を除いた、企業の事業活動から生み出されるキャッシュフローであり、次の算式のように求めることができます。 税引前利払前利益
-上記に対する法人税
――――――――――――
税引後利払前利益
+減価償却費等
-運転資本の増加額
-設備投資額等
――――――――――――
フリー・キャッシュフロー
「税引前利払前利益」は、実務上営業利益を用いることが多いようです。
「上記に対する法人税等」は実効税率(たとえば、40%)を乗じて計算します。「減価償却費等」や「設備投資額等」は、事業計画により将来にわたって計上される償却費あるいは設備投資予定額を計上します。
なお、「運転資本の増加額」は、過去の実績により売上債権回転率、棚卸資産回転率及び仕入債務回転率を算出し、加減算を行うことになります。
「運転資本の増加額」=営業債権の増加+棚卸資産の増加-営業債務の増加
3.割引率の計算
割引率の計算には、加重平均資本コスト(Weighted Average Cost of Capital=WACC)を用います。
加重平均資本コスト
=負債コスト×有利子負債の価値/(自己資本の価値+有利子負債の価値)
+自己資本コスト×自己資本の価値/(自己資本の価値+有利子負債の価値)
WACCは、資金調達元である株主や有利子負債の貸手それぞれが求める期待収益率(資本コスト)を、将来期間の予想有利子負債資本割合によって加重平均したものであり、上記の算式により求めることができます。
負債コストは、企業が資金調達した銀行等からの借入利率から税効果を控除したもので、次のようになります。
負債コスト=借入利率×(1-実効税率)
自己資本コストの算定は、一般的に、CAPM(Capital Asset Pricing Model:s資本資産価格モデル)が用いられています。このCAPMは、次の算式によります。
自己資本コスト=リスク・フリー・レート+β×リスクプレミアム
リスク・フリー・レートとは、投資家が投資期間中に確実に果実を獲得できると考えられる金融商品の利回りで、一般的には長期国債の利回りが用いられます。
リスクプレミアムとは、特定のリスク資産に期待される利回りとリスク・フリー・レートとの差のことをいいます。リスクの大きい投資ほど高い利回りを要求されることから、リスクプレミアムの大きさはリスクの大きさと比例します。
β値とは、株式市場全体の収益率が1%変化したときに当該株式の収益率が何%変化するかを表したもので、個別株式の株式市場全体に対する感応度をいいます。たとえば、β値が1.5の場合、市場が10%上昇するとその銘柄は15%上昇することを意味します。
4.終価の計算
終価(Terminal Value=TV)とは、事業計画が作成された最終事業年度における最終事業年度の翌事業年度以降のフリー・キャッシュフローの割引現在価値合計額をいいます。この場合、売上高の安定成長を維持するのに必要な設備投資のみが行われ、運転資本の増加もないといった仮定や、超過利潤に関しては新規参入による競争均衡に落ち着くといった前提条件を置く必要があります。
終値=最終事業年度の翌事業年度以降のフリー・キャッシュフロー×現価係数
5.株主価値の計算
最終的な株主価値の算定にあたっては、事業価値に非事業資産を加算し、そこから有利子負債を差し引くことになります。非事業資産には現預金や、余剰資金を運用している有価証券や遊休資産が含まれ、有利子負債には、銀行からの借入れや発行社債等があります。
|
お問合せはこちら |